今回は、医療コンサルティング業務の中でも特にご相談の多い「医療法人の理事長変更手続き」について解説します。
実際に今月も、大阪府内の医療法人診療所において2件の理事長変更が進行中であり、その実務経験を踏まえて、手続きの流れをまとめました。
「理事長変更」に伴う各種書類を提出する機関の順番は、大阪府内の医療法人診療所を例にすると、主に以下の通りとなります。
- 大阪法務局(本局または各支局)
- 大阪府庁(大阪市保健所)
- 所管の地区保健所
- 近畿厚生局 指導監査課
以下では、それぞれの手続きにおいてどのような書類が必要となるのかについて、順に説明していきます。
手順① 大阪法務局(本局、支局)
理事長変更にあたって、まず対応が必要となるのが大阪法務局での登記手続きです。
医療法人の理事長は法人の代表者にあたるため、変更が生じた場合には理事長変更登記を行う必要があります。
登記申請先は、医療法人の主たる事務所の所在地を管轄する法務局となり、
- 大阪市内に所在する医療法人の場合:大阪法務局本局
- 大阪市外の場合:大阪法務局の各支局
が提出先となります。
大阪法務局で必要な提出書類
医療法人変更登記申請書
添付書類:
- 社員総会議事録
- 理事会議事録
- 理事長就任承諾書
- 医師・歯科医師免許証(写)
- 委任状(必要な場合)
- 登記すべき事項用紙
- 印鑑届出書 等
手順② 大阪府庁(大阪市保健所)
法務局での理事長変更登記が完了した後は、所管行政庁への届出を行います。
大阪府内の医療法人診療所の場合、提出先は以下のいずれかとなります。
- 大阪府内(大阪市外)に所在する医療機関:大阪府庁
- 大阪市内に所在する医療機関:大阪市保健所
医療法人の理事長は、法人運営や診療所の管理において重要な立場であるため、変更が生じた場合には、速やかに所管行政庁へ届け出る必要があります。
大阪府庁(大阪市保健所)で必要な提出書類
役員変更届
添付書類:
- 社員総会議事録
- 理事会議事録
- 理事長就任承諾書
- 理事長就任者の履歴書
- 医師・歯科医師免許証(写)
登記事項変更登記完了届(理事長変更が完了後提出)
添付書類:
- 登記簿謄本
手順③ 地区保健所
大阪府庁(または大阪市保健所)への届出とあわせて、診療所を管轄する地区保健所への手続きも必要となります。
地区保健所は、医療機関の開設・管理状況を直接管轄する機関であり、理事長変更は、診療所の管理体制に関わる重要な変更事項として取り扱われます。
地区保健所で必要な提出書類
診療所開設届出事項中一部変更届出書
理事長の交代の届出(添付書類:なし)
診療所管理者変更届
管理者の変更も同時に行う場合に提出します。
添付書類:
- 医師・歯科医師免許証(写)(保健所の原本照合要)
- 臨床研修修了登録証(平成16年以降に医師免許証を取得した場合、または平成18年以降に歯科医師免許証を取得した場合で保健所の原本照合要)
- 管理者の履歴書
手順④ 近畿厚生局指導監査課
最後に行うのが、近畿厚生局 指導監査課への届出です。
近畿厚生局は、医療法人に対する指導監督や診療報酬に関する事項を所管しており、理事長変更についても、適切な届出が求められます。
提出先は、医療機関の所在地を管轄する近畿厚生局 指導監査課となります。
近畿厚生局指導監査課で必要な提出書類
保険医療機関届出事項変更届
開設者の変更、管理者(同時に変更する場合)の変更(添付書類:なし)
保険医療機関届出事項変更届(保険医の転入・転出用)
理事長変更に伴い保険医に入退職がある場合(添付書類:なし)
まとめ
理事長変更は、単なる役員交代ではなく、医療法人全体の管理体制に影響する重要な手続きです。
登記・行政・厚生局と複数の機関への届出が必要となるため、順序や期限を誤ると、思わぬ指導や確認を受けることもあります。
実務を円滑に進めるためにも、早い段階から全体像を整理し、専門家のサポートを受けながら進めることが望ましいといえるでしょう。
この記事の監修
高山 英雄
医療コンサルタント
有限会社ビジネススクェア 代表コンサルタント。
株式会社関総研にて約17年間、数多くの医療機関・一般法人のコンサルティングに従事。社長室長・グループ常務取締役を経て、同社設立。これまで1,000件を超える医療コンサルを手がける。
