在宅医療において「重症患者」に該当するかどうかは、診療報酬の算定に直結する重要な判断ポイントです。
しかし実際の現場では、「どの疾患が対象になるのか」「状態と疾患はどこまで見ればよいのか」など、判断に迷うケースも少なくありません。
本コラムでは、在宅医療における重症患者の判断基準を整理し、算定要件や実務上の注意点について分かりやすく解説します。
在宅医療で「重症患者」と判断される疾患・状態とは
在宅医療において「重症患者」に該当するかどうかは、在宅時医学総合管理料や施設入居時等医学総合管理料の算定に直結する重要な判断ポイントです。
以下は、制度上「別に厚生労働大臣が定める状態の患者」として扱われる主な疾患です。
次に掲げる疾患に罹患している患者
- 末期の悪性腫瘍
- スモン
- 難病の患者に対する医療等に関する法律第五条第一項に規定する指定難病
- 後天性免疫不全症候群
- 脊髄損傷
- 真皮を越える褥瘡
次に掲げる状態の患者
- 在宅自己連続携行式腹膜灌流を行っている状態
- 在宅血液透析を行っている状態
- 在宅酸素療法を行っている状態
- 在宅中心静脈栄養法を行っている状態
- 在宅成分栄養経管栄養法を行っている状態
- 在宅自己導尿を行っている状態
- 在宅人工呼吸を行っている状態
- 植込型脳・脊髄刺激装置による疼痛管理を行っている状態
- 肺高血圧症であって、プロスタグランジン I2製剤を投与されている状態
- 気管切開を行っている状態
- 気管カニューレを使用している状態
- ドレーンチューブ又は留置カテーテルを使用している状態
- 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態
疾患と状態、どちらか一方に該当すればよい?
在宅医療において、①の厚生労働大臣が定める疾患または状態のいずれかに該当していれば、制度上「重症患者」として取り扱われます。両方の要件を同時に満たす必要はありません。
たとえば、指定難病や末期の悪性腫瘍といった疾患に該当する場合は、特定の医療行為を行っていなくても、重症患者として判断されます。
一方で、疾患に該当しない場合であっても、在宅酸素療法や在宅透析など、一定の医療行為を継続して行っている状態であれば、同様に重症患者として扱われます。
在宅医療における重症患者算定時の注意点
厚生労働大臣が定める疾患または状態のいずれかに該当しているかを明確にする
疾患と状態の両方を満たす必要はありませんが、どの要件に基づいて「重症患者」と判断しているのかを明確にしておく必要があります。
診療録に判断根拠を具体的に記載する
疾患名、該当条文、実施している医療行為(在宅酸素療法等)について、第三者が見ても判断できるように記載しておくことが重要です。
医療行為の実施状況と算定内容の整合性を確認する
実際に行っている医療内容と、算定している管理料や区分に食い違いがないかを定期的に確認する必要があります。
月途中で状態が変更になった場合の取扱いに注意する
在宅酸素療法の開始・中止など、月の途中で状態が変わった場合は、算定可否の判断が変わることがあります。
訪問看護指示書や他職種との記録内容を統一する
医師の診療録と、訪問看護指示書・看護記録等に矛盾がないかも、指導・監査時に確認されやすいポイントです。
経過措置や制度改定の有無を定期的に確認する
診療報酬改定や通知により、要件や解釈が変更されることがあるため、最新情報の確認が欠かせません。
よくある質問
Q1.指定難病に該当していれば、症状の程度に差があっても重症患者として扱われますか?
指定難病に該当する場合は、症状の重さにかかわらず、制度上は「別に厚生労働大臣が定める状態の患者」として取り扱われます。ただし、診療録には該当疾患名を明確に記載しておくことが重要です。
Q2.疾患と状態の両方に該当していないと、重症患者にはなりませんか?
いいえ。厚生労働大臣が定める疾患または状態のいずれか一方に該当していれば、重症患者として判断されます。両方を満たす必要はありません。
Q3.在宅酸素療法を一時的に中止した場合、算定はどうなりますか?
在宅酸素療法を中止している期間は、「状態」による重症患者の要件を満たさなくなる可能性があります。中止・再開の時期を診療録に明確に記載し、算定可否を慎重に判断する必要があります。
Q4.月の途中で重症患者に該当する状態となった場合、算定は可能ですか?
月途中で要件を満たした場合でも、算定可否の判断が必要となります。開始日や状態の変化について記録を残し、算定要件との整合性を確認することが重要です。
Q5.指導・監査ではどのような点を確認されやすいですか?
重症患者と判断した根拠(疾患名や医療行為の内容)が、診療録や関連書類に明確に記載されているか、また算定内容と実際の医療行為に不整合がないかが重点的に確認されます。
まとめ
在宅医療における厚生労働大臣が定める状態の患者の判断は、在宅時医学総合管理料や施設入居時等医学総合管理料の算定に直結する重要なポイントです。
疾患または状態のいずれかに該当していれば重症患者として扱われますが、算定にあたっては、その判断根拠を診療録等に明確に残しておくことが不可欠です。
また、患者の状態変化や医療行為の実施状況によって算定可否が変わるケースもあるため、日頃から記録内容と算定内容の整合性を確認しておくことが求められます。
制度の正しい理解と適切な運用を行うことで、指導・監査時のリスクを抑えつつ、適正な診療報酬算定につなげていきましょう。
この記事の監修
高山 英雄
医療コンサルタント
有限会社ビジネススクェア 代表コンサルタント。
株式会社関総研にて約17年間、数多くの医療機関・一般法人のコンサルティングに従事。社長室長・グループ常務取締役を経て、同社設立。これまで1,000件を超える医療コンサルを手がける。
